青い目覚まし時計
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私は、どこにでもいる普通のサラリーマンだ。もうすぐで40歳になると言うのに、いまだに独身生活を送りながら生活している。会社では、毎日健康グッズの訪問販売をしている。たまに売上目標を達成できない月もあったが、平均して目標は達成できていたので首は繋がっている。
今日は、そんな私が体験したとても不思議な出来事を、紹介しよう。
チリリリリリリリ!!
今日もいつも通り…じゃないな、きっと爆睡してて目覚まし時計の音に気付くのが遅かったのだろう。いつもなら朝の七時一五分に鳴るはずだったのだが、今日は七時一七分に鳴っていた。
チリリリリリリリ!!
「ふ…ふぁぁぁぁああ。」
私は、普段通り自分が寝ていたベッドの左隣にある小さな丸いテーブルにおいてある目覚し時計を止めた。
しかし、今日はいつもの茶色っぽい目覚し時計の色が違う気がした。目が覚めたばかりの冴えない頭でぼやーっとこんなことを考えたが、思考能力がこの事態に追いつかなかったので、1階のリビングへ階段を下りた。
すると、リビングにも色が変わっている家具があった。さっきの寝室にあった、目覚し時計と同じような色。やっと、脳が動いてきたようだ。この色は青だ。しかも時計、テレビ、いす以外には何も変色は起きていなかった。きっと昨日、夜遅くまで商品リストを作っていたから目が疲れているのだとその時は思った。
ひとまず、朝食を食べることにした。コーヒーにトーストのシンプルな内容となっている。時計やテレビ、いすは依然として青色がかかっている。
朝食を食べ終えた私は、早速会社に出勤する準備を始めた(準備といっても服を着替えて2階にあるカバンを持ってくるだけだが…)。そして出勤する前になると、さらに目が悪化していることに気が付いた。
さっきまでは少しの家具が青くなっていただったのだけれど、今はもうほとんど全体が薄い青色に染まっている。さすがに心配になった私は、もっていたカバンをその場に置き、電話で欠席の連絡を会社にいれ、財布を別のカバンに入れて、そのまま病院に向かった。
病院は車で30分くらいにあるけれど、その間にも青さは視野全体を包み込んでいた。
病院までもう3分もないところまで来ていたが、もう目の前が深い海の底のように感じられた。
残り少ない視力で何とか車を病院の駐車場へと停めることができた。車から出た瞬間、私の視界は真っ青になり、何もかもが見えなくなってしまった。
何かにぶつからないように手を前に出してよたよたとゆっくり歩きながら病院の入り口を探した。しかし、私は間違った方向に足を進めていたようだったのだ。
パァァァァァァァァ!!
突然、右方向から、クラクションがなった。
チリリリリリリリ!!
この憂鬱な音が私を夢の世界から引きずり出した。ん…?夢だったのか?いやな夢だった。今日は何かついてないことがあるのかもしれないな。しかし、内心ほっとしたのも事実である。
チリリリリリリリ!!
私はベッドの左隣にある小さな丸いテーブルにおいてある目覚し時計を止めようと体を左に傾けて、テーブルに手を伸ばした。
そこにはどこかで見たことのある不気味な青色の目覚し時計が置いてあった。